Driver's Salon
 クルマを愛して止まない「彼ら」との対話。それがレーサー鹿島のドライバーズサロン。

時速300キロ、オートバーレースの裏側

(8月28日放送)
中野真矢

中野真矢
(なかの しんや)

1977年10月10日生
5歳でポケットバイクに出会い、その後ロードレースの世界に。 1998年にYZR250で全日本チャンピオンを獲得、翌年から世界GP250ccクラスへ参戦。2000年には世界ランク2位を獲得し、翌2001年、最高峰500ccクラスへステップアップ。 2003年、長年所属したヤマハからカワサキレーシングチームへ移籍。その年の日本GPでカワサキへ最高峰クラス初の表彰台をもたらす。 その後ホンダへ移籍、2008年までの10年間、56番のゼッケンと共に世界最高峰のGPを戦い続け、そのスマートなライディングで世界中のモーターサイクル&モータースポーツファンに愛された。 2009年にはアプリリアレーシングチームよりワールドスパーバイク世界選手権に参戦。シーズン終了と共に、惜しまれながら現役引退を発表した。 現在は自身のブランド・56designのプロデューサー、 MotoGP・日本GPのPRプロデューサーの他、TV中継の解説者として活躍。また、未来を担う子供たちを対象とした電動バイク体験キャラバンのキャプテン(インストラクター)を担当している。

このコーナーでは、レース関係者はもちろん、車を愛してやまない各界の有名人をゲストにお招きして、カーライフやレースのエピソードなど、その人物の本音にレーサー鹿島が迫ります。

今週は、オートバイレースの世界最高峰MotoGPでの活躍を経て、現在はテレビ中継の解説、後進の育成に尽力されているライダーの中野真矢さんをお迎えします。じっくりとお楽しみ下さい。

もちろん、プロでも怖いですよ
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鹿島 :今日のゲストは、ライダーの中野真矢さんです。よろしくお願いします。

中野 :よろしくお願いします。

鹿島 :MotoGPの日本グランプリが毎年、栃木県のツインリンクもてぎで行われていますが、今年は9月30日(金)から10月2日(日)まで。一時は震災後の原発の関係もあって開催が危ぶまれているんじゃないかという報道もありましたが。

中野 :そうなんですよ。話すと長いんですが、昨年も日本グランプリは延期になりました。ヨーロッパの火山の影響で10月に延期になって、今年も震災の影響で延期になったんですけど、福島にも近いということで海外選手たちはちょっとナーバスになっていた部分があったんですよね。ただ主催者の方で第三者のスペシャリストがチェックしたところ問題ないということで開催宣言も正式に出されまして、これから盛り上げていきたいと思っています。

鹿島 :本当に良かったですよね。詳しくはまたのちほどお伺いします。前回、聞ききれなかったんですが、MotoGP、いわゆるトップの世界のオートバイレースの魅力をもうすごしグッとインサイドに入っていきたいんですけど。まず、300q/hで二輪で走るっていうのはとっても怖そうなんですが、どんな感覚なんですか。

中野 :いや、怖いですよ(笑) よく聞かれるんですね、「300km/hで走るの?」って。例えば隣にライバルが300q/hで走っていてもほとんど同じスピードで走っているので、変な話ですが触ろうと思えば触れる距離にいるだけなんですよね。なにがすごいかっていうと風圧ですね。300q/hで走っていても自分はカウリングというものに前傾で伏せて風の抵抗を受けないように走っているんで、意外と静かなもんなんですよ。ただ一度そこから減速するのに顔を出す、体を上げるとやはりものすごい風圧で後ろに吹っ飛びそうになりますよね。

鹿島 :なるほど。それを利用してブレーキングの補助にするような技もあるわけですよね。

中野 :そうですね。オートバイにはクルマのウィングみたいなものは無いので、そこは自分が逆に風の抵抗になったりして、300q/hから一気に60km/hくらいまで落とすことがあるので、そういうGっていうのはものすごいものがありますよね。腕立て伏せしていて背中から何人かに押されているような感覚ですね。

鹿島 :基本的にはフロントブレーキをメインで止まっているわけですよね。

中野 :そうです。オートバイはリアブレーキはレースでは姿勢を調整するくらいで、基本はフロントブレーキだけですね。

鹿島 :テレビの中継もハイビジョンになって、スローで見るとすごく細かいところまで見えますけど、完全にリアは浮いていますもんね。

中野 :リアタイヤはぽんぽん浮くくらいフロントブレーキをハードにかけていますので。

鹿島 :あれはなぜ、ジャックナイフ状態と言いますか、もっと後ろが浮き上がって転倒しないんですか。

中野 :フフフ、そこはね…僕も思うんですけど、本当にギリギリのところで人間の感覚ってすごいんです。シートに座っていてお尻からくる情報で、フロントブレーキをちょっと緩めたりっていうのを体で覚えて知っていますよね。

鹿島 :ところでレースの中継をテレビで見ていますと、クルマのレースとの最大の違いがあります。クルマも時々ホイールとホイールやカウル同士が当たったりすることがありますけど、バイクの場合は大げさに言うとちょっと肘で相手のバイクの邪魔をしているように見えたりとか、足が出ていたりとか、完全に体と体が当たっていますよね。

中野 :そういう時もありますよね。それもそれなりの速度が出ていますし、プロ同士である意味信頼し合って走っている部分があります。その領域をちょっと超えると接触して転倒するという危険もあります。だからその辺はお互いを見ながら走っていますよね。

鹿島 :よくルーキーが出てきた時に、スタート直後の1コーナーや2コーナーで絡んだりするじゃないですか。

中野 :ありますね。

鹿島 :あれってやっぱりそのあたりの空気が読めていないというか。

中野 :まさにその通りです(笑)。

鹿島 :フフフ。

中野 :頼むよ〜、みたいな選手もたまにいます。まあ自分もそうやってやってきた部分もあるんですけどね。でもクルマもその辺のルールをしっかり守らないと…。

鹿島 :F1でも、新人で下のクラスから勝ち上がってきた人が開幕戦で、1つ目のコーナーをまっすぐ行きながら周りのクルマをすごい勢いで巻き込んで、赤旗が出てレースが中断して、先輩ドライバーがその間にお説教みたいなことがね。でもセナもシューマッハもそうでしたからね。

中野 :やっぱりそういう時代ってあるんですね、勢いというか。僕もヨーロッパでよくF1は観に行きましたよ。興奮しましたね。

鹿島 :あとはバイクレースというと、ライダーの方には申し訳ないのですがアクシデントのシーンが注目されますよね。そういうのをダイジェストにしたシーンが流れるじゃないですか。本当に失礼な話なんですけど、大怪我をされていない場合は、見ていてわっすごいなって単純に思っちゃいますよね。

中野 :そうですね。言われますよ、転んでゴロゴロってなって、でもライダーはそのまま立ち上がってすぐマシンに向かって再スタートしようとするじゃないですか。なんなんだあれはと。初めてレースを観た方は「大丈夫なのか」と思われるんですけど、当然スポーツなので怪我につながる場合もありますが、装具が今はすごく進化していて、エアバッグ内蔵のレーシングスーツも出てきていますからね。

鹿島 :なるほど!

中野 :それも転倒したのをGPSとかそういうので感知して、自動的にエアバッグが開くようになっていたりとか。

鹿島 :あ、じゃあ空中を飛んでいる間に?

中野 :そのつなぎの中でエアバッグが開くという。

鹿島 :あると無いとでは全然違うんですよね。

中野 :最近、開発しているメーカーが出てきて、まだ全部のライダーには使われていないんですけど、これからどんどん進化していくと思いますね。

鹿島 :なるほどね。でもそういう部分はレースで開発をして必ず一般道にフィードバックして欲しいし、されるでしょうね。

中野 :それがレースの意味ですからね。我々はヘルメットをかぶっていますけど、300q/hで走らなければいけないので空力ですよね、少しでも空力が悪いと頭がブレちゃって走れないので、その辺だとか安全性は間違いなく市販品にフィードバックされていますよね。


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父がメカニック、母がシェフ