Driver's Salon
 クルマを愛して止まない「彼ら」との対話。それがレーサー鹿島のドライバーズサロン。

レースには永遠のロマンがある
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鹿島 :稲川さんがおっしゃっていたクルマたちって、エンジンがものすごい馬力があって、その割にブレーキがあまり効かなくて、見た目も本当にフロントが低くてリアが上がっているエッジシェイプで独特でしたよね。

稲川 :そうでしたよね。でも実際に見ると、写真よりも小ぶりなんですが、あの迫力と美しさはたまらないですよね。当時は船橋サーキットなんてあったんですよ。

鹿島 :浮谷東次郎さんとか。

稲川 :ええ、ええ。ああいうの見に行ったりしましたよね。エンジン音やハンドルを握った感じだとか、あの世界は特に男の子にしてみると、たまらない永遠のロマンや情熱を掻きたてるものがありますよね。

鹿島 :ありますね、私も今も続いていますからね(笑)。

稲川 :そりゃもう、私もいつも見てますよ。(TVのレース中継で)コメントしてらっしゃいますよね。私もレース好きですから。

鹿島 :ありがとうございます。インディとかF1とか観られますか。

稲川 :もちろん観ますよ、大好きで。

鹿島 :F1ドライバーで一番印象に残っている人はいますか。

稲川 :今の人もすごいのがいるけど、やっぱり空飛ぶスコットランド人、ジム・クラークが好きなんですよ。まだ羽根もあんなに大きなのがついていない頃で。ロータスの昔のボディですか。

鹿島 :よく“葉巻型”って言われたやつですよね。

稲川 :そうそう! 恋人と結婚する1週間前でしたかね。恋人が「レースが一番よく見える森で待っている」という、その森に飛び込んでしまい、棺桶に入って死ぬじゃないですか。ドラマチックだなと思ってね〜。それからもちろんマクラーレンなんかも感動したのを覚えていますよ。あの人がカンナムに出た時の自伝を読んでね。私はたまたまスタジオでもって映像を見せてもらったんですね。それでマクラーレンのことを知って、写真も映像も見て感動しましたね。カンナム、カナディアン・アメリカン・チャレンジカップ。

鹿島 :アメリカを中心に行われていた大人気レースでしたよね。

稲川 :それを見てたら、デニス・フルムという年のいったレーサーさんが、ヨーロッパにたまたま行った時に時間が開いてどうしようかと思ったら、「あなたの若い頃に似た人がいて、自分でレーシングカーを作ってレースも出ている。会ってみますか。」と言われたんだそうです。そして時間つぶしに行ってみたら若い青年が一生懸命お金を貯めては作っているレーシングカーを見て、それがすごくいい出来だった。その若者が自分の若いころにダブったって言うんですね。それでデニス・フルムは、この人と一緒に何かしてみたいと思って、一緒にやろうかと声をかけたんだそうです。するとその若者とのレースが始まったんです。それから連勝でしたよね。栄光のランデブー。夕日が沈む坂のゴールに向かって、エンジン音がダブルで聞こえてきて、オレンジ色のマシンがキラっと光る。その瞬間にデニス・フルムが手を挙げて、親指を前を指す。俺の前にブルースがいるぞと。ブルースは、「いるぞ」っと手を振る。あれがカッコ良くてね。ところが私が浜松に行ったときに、ブルース・マクラーレンがテストラン中にたった一本のポールにぶつかって亡くなったっていうんですよ。ああそうかと。世界中が「マクラーレンが出ないなら、他が優勝するだろう」と。デニス・フルムはお年だし出るわけないと思われていた。ところが出たんです、デニス・フルムが。年なのに一人で去年使ったマシンを手直しして、ゼッケンはブルースのゼッケンをつけて。元々、デニス・フルムが周りのマークを邪魔するんですよね。

鹿島 :チームプレーですね。

稲川 :それでブルースを前にやって自分は後ろについてっていう方法だったんですが、今回は誰もいない。ましてや丸々1日走るでしょ、その時にみんなが粘ったら勝てるわけないですよね。私はその映像を観ましてね。夕日が沈む頃に、エンジン音が聞こえるんです。1台になってしまったオレンジ色のマシンが夕日の中を飛んでくる。それもブルース・マクラーレンのゼッケンをつけているんです。それが突っ込んできた時に、フランスもイタリアもみんな敵のはずなのに、大きな旗を持ってサーキットの中でぶんぶんと振るんです。その旗の中をデニス・フルムがブルースのゼッケンをつけて突っ切りながら、ひょいと手を挙げて“俺の前にブルースがいる”ってゴールしてね。もう感動しましたよね。身震いしたな。

鹿島 :お話を聞いていても鳥肌が立ちますね。

稲川 :いいですよね〜。でも鹿島さんはそういう世界にいらっしゃるんだから羨ましい。

鹿島 :モータースポーツって、本当に命がけの部分もあって、時として耐久レースなんかは特にゴールシーンでメーカーや国境の壁も超えますよね。

稲川 :そうですよね。1回オートバイで、鈴鹿8耐の監督をやったことがあるんですね。あれは言いようがなくありますね。ましてや四輪のレースだと。それぞれが背負っている人生だとか人間関係、ロマンもあるし、それをかけている瞬間が。その中でやっているというのは、永遠なるロマンですよ。

鹿島 :監督やチームオーナーをこれからまたやってみたいという気持ちはないんですか。

稲川 :いや〜、私なんか邪魔になるばっかりですよ、くそじじいですからね(笑)。

鹿島 :いやいや、なんかすっごくチームがまとまるような気がしますよ。

稲川 :いえいえ、みんな集めて怪談話するくらいのもんでしょ(笑)。

鹿島 :そっちですか(笑) 。

稲川 :でも本当に好きです。レースは最高ですね。

鹿島 :工業デザイナーとしてのお話も少し聞いていきたいんですけど、平成8年にグッドデザイン賞を受賞されているじゃないですか。これは車止めだったんですね。

稲川 :ええ。それがおかしいでしょ。というのは、いくつかデザインしたかったんですが、私がやっている世界っていうのは、全部が全部を自分でできないんですよね。例えばクルマもそうですよね、みんな自分で作れるわけじゃないでしょ。それで車止めを頼まれたんですよ。その時にふと思ったのが、日本もこれからどんどん高齢化になっていくと、歩道と車道が段差が無い方がいいですよね。危ないですから。それもクルマが入ってこないで分かりやすいのはなんだろうと思ったんです。ある時に街路灯の明かりが並木より上にあるのを見たんです。これ冬はいいけど夏になったら街灯の明かりが葉っぱの影になっちゃうでしょ。これはおかしいなと思ったんです。それで一番いいのは、そこに綺麗な石のクルマ止めがあって、それ自体が外側に小さな明かりを出して、内側に大きな明かりを出す。そうすると歩道を歩いている人はライティングでライトアップされて歩けます。クルマも、明かりがついていればそれを目印にして事故が無くなる。これだと思ってデザインして出したんです。そうしたらメーカーさんが特許に出して下さったんですね。250社出ている中で、「稲川さん、おかげさまで入りましたよ」って言われて嬉しかったです。

鹿島 :それは実際にどこかで実用化されているんですか。

稲川 :たぶん外国の方が多いんじゃないですかね。

鹿島 :話は尽きませんが、来週またこの話の続きをお願いします。

稲川 :わ、うれしい!

鹿島 :ところで稲川さん、今年で19年目を迎える『ミステリーナイトツアー2011 稲川淳二の会談ナイト全国ツアー』が、7月23日から。

稲川 :そうなんです。あたふたしてます本当に。毎年話は決まっているんだけど、どんどん状況が変わっていって、あたふたしながら本番を迎えるんですよね。楽しみですが。

鹿島 :公式ブログをよまさせて頂いても、お話の時は怖いですね。

稲川 :ありがとうございます。

鹿島 :「電気を消して」と書いてあるので、消してみました。

稲川 :節電に協力しなきゃいけないんでね(笑)。

鹿島 :だいぶエアコンがいらない状況になりましたね。その辺ももしよろしければ来週お話を伺いたいと思います。来週もお願いします。

稲川 :ありがとうございました。





今週は、タレント、怪談家で
工業デザイナーの稲川淳二さんをお迎えしました。

ドライバーズサロン!
来週も稲川淳二さんをゲストをお迎えしてお送りします。
お楽しみに!




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