Driver's Salon
 クルマを愛して止まない「彼ら」との対話。それがレーサー鹿島のドライバーズサロン。

佐藤琢磨、乱気流との戦い
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鹿島 :ところで今年、大きな話題となっているのが41歳のミハエル・シューマッハ。鳴り物入りで復活したんですけど、いまいち調子が出なくて、先日は本人が「今年はもうタイトルは無理だ」発言をしたりですとか、ちょっとシューマッハらしくないな〜なんて雰囲気もあるんですけども。

高橋 :その辺はやっぱり、7回チャンピオンになったスーパースターでもわきまえていまして、シューマッハだってやっぱりフェラーリに移籍した当初は、しばらく勝てない時代がありますし、2003年とか、やっぱり近代でもチャンピオンを逃した、優勝がなかなか出来ない時代はありました。そういうのは冷静に受け止めて、今年はもう半分消化した時点で、マクラーレンとかレッドブルにはちょっとついて行けないっていうところは、判断したんだと思いますけどね。ただ、レースに対する取り組み方、チームをいかに強くしていくか、自分中心で回していくか、そういう部分も含めたトータルのマネジメントはシューマッハの右に出る人は、たぶんいないと思うんです。

鹿島 :まだまだそうなんですね。

高橋 :だと思います。だから今年の彼が乗っているクルマっていうのは、去年の流れを引き継いだチームとクルマで戦っているので、シューマッハ色をいわゆるハードウェアやチームのソフトウェアに注入しきれていないんですね。だからこれから、来年のクルマ作りにはシューマッハ好みの色んなものとか、シューマッハのアイデアが入ってくる。そうすると昔の強かった頃の片鱗はちょっとずつ戻ってくるのかなと、期待しているんですけどね。

鹿島 :なるほどね。じゃあここからひと頑張り、来年以降に期待ですかね。

高橋 :そうですね。42歳、43歳でも体力的には衰えていないはずですから。まだまだやってくれるんじゃないかと期待しています。

鹿島 :そこがまたすごいですね。さて、話は変わりますけど、佐藤琢磨選手が、F1を一時的に辞めて、しばらく乗るクルマを探していたわけですけど、今年はアメリカの最高峰のインディにデビューしまして、もうデビューレースからキチっといい仕事をして、先日のアイオワでは、難しいと言われるショートオーバルという、1周を十何秒でまわる非常に難しいコースで3番手まで追い上げて、1位までいけそうなところで残念ながらクラッシュをしてしまったんですけど、ものすごくアメリカで評価が高いですね。

高橋 :そうですね。やっぱりデビューして間もないレースで、ショートオーバルって今年はあんまり開催が多くないんですよね。

鹿島 :もうないんですよ、ショートオーバル。だから初めてのショートオーバルで、テストなしで予選7位という。

高橋 :これは今まで、何人か日本人の選手もインディカーに挑戦してきましたけど、まあ2年目か3年目で割とトップが見える位置までいった人はいましたけど、いきなりここまでくるっていうのは、ちょっと記憶にないくらい。まあなかなかノッてるんじゃないかと。合ってるかも知れないですね、アメリカのレースが。

鹿島 :高橋スーパーバイザーにとっては、佐藤琢磨選手というのはF1レーサーとしてのイメージがあると思うんですけど、最近、私の身の回りのアメリカの友人ですとか、ジャーナリストがすごく琢磨に注目をしていて、彼の走りを見ているんですけど、驚く方が多いですよね。「思い切りがいい」ですとか「物事を覚えるスピードが非常に速い」ですとか。

高橋 :うん。非常に頭の良い選手であると同時に、度胸もありますし、F1の時からやっぱり高速コーナーの走り方っていうのも際立っていて、ガンガンとブレーキングも鋭いという特長があったので、アメリカが、わりとF1よりもノビノビとした雰囲気が合っていたのかも知れないし、そういうドライビングの仕方っていうのが、もしかしたらインディカーに合っているのかも知れないですね。

鹿島 :インディ500という、アメリカで最大のビッグイベント、40万人くらいがレースを観に来る大会の前にインタビューをすることができたんですけどね、やっぱりブレーキを踏まないハイスピードのレースということで、最初はちょっと戸惑いがあったみたいですけど、色々と聞いていますと本当に楽しそうでしたね。

高橋 :そうですね。例えばシングルで走るという部分においては、かなりのレベルまで到達しているんだと思うんです。ただ、さっきのアイオワにしても3位まで上がったところで、ラップダウンのクルマを抜くときのちょっとした幅寄せ的なことで、気流の変化とか非常に難しい特徴がオーバルのレースの場合はあるみたいなので、そういうところでは1個1個の経験を積み重ねていくしかないと思うんですよね。その辺は鹿島さんの方がオーバルのレースの仕方っていうのは詳しいと思うんですけど。

鹿島 :いやいや、私は一つ下のクラスですけど、300km/hは超えていますが、佐藤選手はこの間、3位を走っていて前に2台の遅いクルマが現れて、それを抜こうとしたんですけど、前を行く2台のうちの1台が佐藤選手の前を横切るように、上から下の方に、いわゆる競輪場みたいになっているオーバルコースの上段から下へ、すっとおりてきたら乱気流に巻き込まれてフロントのフリップが無くなって、壁に吸い込まれるように行ったという。これはよくあることでして、僕もオーバルデビューの頃は、ベテランの選手がわざと乱気流を作るから気をつけろって、よく無線で「前にいる選手は乱気流を起こしがちだから、意地悪されないように上段をキープして走れ」と。

高橋 :なるほどね。難しさってあるんですよね。

鹿島 :すごいんですよ。本当に後ろにいるクルマを吹っ飛ばそうと思えば、ライン取り次第でなんでもできるんですよ(笑) だからそういうところの経験がまだなかったんでしょうね。

高橋 :まあ、色んなケースを体験していけば、本当に3位のままフィニッシュしてくれたり、もっと上位のままフィニッシュしてくれるようになると思いますので、できれば秋のインディジャパンで、もてぎに帰ってくるまでには、1回ぜひいい成績を残して、トロフィーを持って帰って来て欲しいですね。

鹿島 :日本で、ど真ん中を見たいですね。

高橋 :見たいですよね〜。でも可能性は感じさせてくれますよね。

鹿島 :いや、相当あると思いますよ。F1も面白いですけど、本当にインディもね、佐藤選手をきっかけに観はじめたっていう方も最近は多いようですから、ぜひ皆さん、時々観て下さい。

高橋 :ライブストリーミングでも観られますからね。

鹿島 :そうですね。ネットでも観られますからね。ただ1周あたり20秒とかで戻ってきますからね(笑)。

高橋 :はい。とっても忙しいんですけどね(笑) しかも大体、夜中の時差の厳しいところで。

鹿島 :慣れると面白くなってきますから(笑)。





暴れん坊マンセル、F1の審判に!?
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鹿島 :ところで7月11日、伝統のイギリスグランプリが来週の日曜日に決勝です。

高橋 :そうですね。イギリスは盛り上がっているみたいですよ。やはりマクラーレンが、イギリスのチームでイギリス人のチャンピオンドライバー。2008年のチャンピオンのハミルトンと、2009年のチャンピオンのジェンソン・バトンが2人いると。こんなことはイギリス史上でも何年もないような状況なので、かなり盛り上がっていると思います。

鹿島 :まあ、色んな意味でイギリスはもう、いまスポーツといえばF1ですかね(笑)。

高橋 :そうですね〜。こないだね、サッカーは残念な結果になったみたいで。

鹿島 :でもあのサッカー観てましたけど、あれは絶対に入っていましたね(笑)。

高橋 :いや、ごめんなさい。サッカー観てなかったんですよ。

鹿島 :あ、観てなかったんですか。もうね、ビデオ判定があったならば、どう見たってゴールを割っているんですけど、そういうシステムがサッカーの場合はないんですよね。そういえばルールと言いますと、F1も最近は往年の名レーサーが、審判団・スチュワードのひとりとしてレースをずっと見ているというシステムが流行っていますよね。

高橋 :そうですね。これはやはり、ドライバー同士のバトルですとか、元ドライバーの視点から見てジャッジをしようということで、いわゆる審判団の中に必ずグランプリごとに一人ずつ、有名な元F1ドライバーの人たちが加わって、何かのジャッジをするときに参考意見を述べるというシステムが今年からスタートしています。

鹿島 :イギリスグランプリでは、イギリスが産んだ元祖暴れん坊こと、ナイジェル・マンセルが。

高橋 :そうなんですよね。初めてだと思うんですけど、マンセルがスチュワード団に加わると。ちょっとこれも、どういうことが起こるのか楽しみなところではありますよね。

鹿島 :その辺も豆知識的なところでありますけど、F1の世界もちょっとずつ変わってきているという見所のひとつにして頂ければと思います。さて、もちろん『F1速報』は、木曜日にすでにヨーロッパグランプリ号が発売されています。ここにはなかなか中継には映らない秘密ですとか、あの時どうだったのかとか、そういうことが載っています。

高橋 :ヨーロッパグランプリは大きなクラッシュもありましたし、可夢偉くんの活躍もありましたし、もしよろしければ楽しんで読んで下さい。

鹿島 :さてもうひとつ、『セナvsプロスト』という本が出ておりまして、いま手元にあるんですけど、表紙がセナとプロストの真剣な表情で。これ、帯に書いてある言葉がすごいんですよね。“アイルトンよ、誰かを殺してでもタイトルが欲しいか”。

高橋 :そうですね。この本はおかげさまで非常に好評を得ているんですけど、300ページを超える大作で、2008年にプロストのロングインタビューをしたんですけど、そのインタビュー内容を軸にプロストとセナ以前だと、ディディエ・ピローニですとかジル・ヴィルヌーヴ、それからナイジェル・マンセル、そして核であるセナとの様々なエピソード、様々な心理描写をずっと著者が綴っている、という内容です。

鹿島 :プロストの視点からセナの全てを語っているということでしょうね。

高橋 :はい。もちろん時代によっては批判的なこともありますけど、プロストが引退してからセナが何度も自分に電話をしてきたりとか、色々相談を持ちかけてきたりというエピソードもあり、セナが亡くなった94年のサンマリノグランプリ前後のエピソードも、非常に初めて知るようなことも多くてですね、すごく読み応えのある内容になっています。

鹿島 :これも発売されていますね。『セナvsプロスト』です。今だからプロストのインタビューで実現できたっていうことも、きっとたくさんあるんでしょうね。

高橋 :あると思います。

鹿島 :じっくり読まさせて頂きます。高橋さん本当に忙しい中、ありがとうございました。

高橋 :とんでもないです、ありがとうございます。

鹿島 :また最終戦を前に、お越し頂きたいと思っていますので。

高橋 :そうですね。先には日本グランプリもあります。

鹿島 :また編集の方も引き続き頑張って下さい。

高橋 :ありがとうございます。






今週は『F1速報』『月刊 F1レーシング』元編集長で、
現スーパーバイザーの高橋浩司さんをお迎えしました。

ドライバーズサロン!
来週も素敵なゲストをお迎えしてお送りします。
お楽しみに!




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