Driver's Salon
 クルマを愛して止まない「彼ら」との対話。それがレーサー鹿島のドライバーズサロン。

F1とインディ、最大の違いは
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鹿島 :インディのレースは、とにかくライバルの皆さんに、ある意味認めてもらわないと、スピードがあまりにも速いですから、“仲間”として認めてもらうことによって、一緒にポジションを上げていくですとか、同じ気持ちを共有しながら安全もお互いに管理しながらと、ちょっとそういうところはF1とはやっぱり違いますか。

佐藤 :そうですね。そこは最も違うところだと思います。もちろんインディカーのドライバーだって、みんな“お手手を仲良くつないでレースしましょう”ではないです。ものすごくタフだし。その中で最大限のリスペクトというか、お互いを分かり合っている状態じゃないとレースにならないんですよね。必ずしもヨーロッパのレースはそれが必要かというと、そうではないと思う。もちろんお互いにリスペクトがなければホイール・トゥ・ホイールのレースは出来ないけども、オーバルはそれが大きな安全性に関わってくるので、ドライバーの意識レベルとしてはそこはすごく高いですよね。

鹿島 :そういった意味では序盤から、予選でも決勝でもいわゆるベテラン勢といいバトルが展開していますから、一気に懐に飛び込んでいったっていう実感があるんじゃないですか。

佐藤 :本当にそうそうたるメンバーと今回一緒に走れたことで、自分自身の走りっていうのも彼らの中に深く刻み込めたと思うし、逆に僕も彼らと最大限のリスペクトで接近戦をできたので、非常にやっていて興奮したしとにかく楽しかった。楽しくレースをしている時っていうのはお互いに分かるので、走りに現われますからね、だからそれはきっとオーバルレースで今後やっていく中で、カンザスでのレースっていうのはすごく大事だったんじゃないかなって思います。

鹿島 :体力に関しましては、元々が自転車のトップクラスの選手ですし、今日も相変わらず首も太いですしバッチリ鍛えているっていうのは本当によく分かるんですけど、F1とインディ、体力面ではどうですか。

佐藤 :実際に消費するエネルギーの量でいうとF1の方が高いです。というのはフィジカル的にF1のマシンの速さっていうのは本当にすごいので、僕もこれまで平均しても1レース終わると、だいたい体重が2kg、多い時は3kgくらいは減ってしまう。そのくらいの運動量なんですね。それに対してインディカーの方は、クルマがちょっと重いっていうこととエンジンパワーが少し低いので、クルマ自体から受ける横G、遠心力は低い。その分使う体力は低くなるんですが、逆にですね、F1マシンはパワーステアリングですとかドライビングに集中するための装置がたくさんついているんですけど、インディカーははっきりいって本当の機械。だから電子制御されているところが何も無いので、ハンドルもパワーステアリングじゃないので非常に重い。それはむしろF1以上に、アッパーボディの強さが必要になるし、部分的にはF1よりもずっとハードなボディコントロールが要求されますね。

鹿島 :インディに取り組むにあたってトレーニングの方法を変えているんですか。

佐藤 :いま言ったとおりハンドルの重さっていうのは尋常ではなくて、そこに追いつくために腕まわりのトレーニングにシフトしたというか。これまでF1で最も負荷が掛かっていたのは首なんですね。正直言ってインディカーでは、僕は首にはなんとも感じないんですけど腕はさすがに厳しいので、そこらへんのトレーニングはちょっと変わった。でもそれ以外に関して当然の基礎体力を維持するためのランニングであったり、スイミングであったりサイクリングであったりというトレーニングはこれまで通りですね。

鹿島 :今日ラジオを聴いている方は、レーシングカーを運転したことがない方ばかりだと思うんですけど、インディのハンドルの重さを何かに例えるとどれくらい重い感じですか。何kgくらいの重りをずっと持ち続けているようなイメージですか。

佐藤 :ああ〜なるほど。うーん、ストレート部分では休めると仮定したとしたら、例えば7〜8kgから10kg近い…うん。

鹿島 :バーベルを両手に1個ずつもって2時間、廊下で立ってなさいみたいな(笑)。

佐藤 :それはだから、ずっとやっているのは無理ですけど(笑)、一瞬一瞬で掛かる負荷としてはそれくらいのものが要求される。

鹿島 :今日たまたまラジオを聴いて、インディを観てみようかなっていう方も多いと思うんですね。そういう方はぜひ今の佐藤選手の発言を思い出しながらテレビを観て頂くと。なかなか外から見ると分かりずらいと思うんですけど。

佐藤 :そうですね。

鹿島 :こういうお話を聞いてから観るとだいぶイメージも広がると思います。





日本のファンの前で走れる喜び
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鹿島 :ところで5月末にはインディ500、これはもうアメリカで1911年に始まった伝統的なレースで、ここを制すと人生が変わる、あるいは変わったっていうドライバーが多くて。優勝した翌日に、例えばアメリカ大統領と会談があったりとか、ワイドショーに出まくりだったりとかっていうことがありますけど、インディ500に関してはどんな想いを抱いていますか。

佐藤 :そうですね、インディカーシリーズは知らなくても、インディ500っていうレースは日本にいても子どもの頃から知っていた、それくらい有名なレースですよね。アメリカに関して言えば知らない人はいないですし、レースの決勝日には40万人というとんでもない観客が訪れる。たぶん世界中のスポーツイベントをみても、1日の集客という意味ではインディ500に勝るイベントはないっていう風に聞いているので、そのくらい大きなレースだと思うんですね。ただ自分自身がそこの場を経験していないので、はっきりいってまだイメージが沸かないんですけど、インディ500という特別なレースは、決勝日だけじゃなくてインディを開催する5月そのものがインディ500のためにあるような感じで。普通は1日練習をした後、予選・決勝って大体3日間くらいでレースって終わるんですけど、インディ500に関しては3週間くらいずっとイベントがあるんですね。練習走行も1週間くらいある。予選を終えた後にレースまで1週間ある。そういう意味では、アメリカ、そして世界中がどんどんボルテージが上がっていく感覚っていうんですかね。そんな特別なレースがもうすぐ目と鼻の先にあるので、自分自身としてはいますごく興奮しているというか、早く走ってみたいっていう気持ちですね。

鹿島 :ロサンゼルスのアパートで、初めてインディ500をテレビで観戦した時に、テレビを消してもですよ、隣近所の家から中継の音がガンガン聞こえてきて(笑) 、それが僕にとってのインディ500の鮮烈な思い出なんですけどね。ぜひ中継で何度も、佐藤選手の名前が呼ばれることを期待していますので。

佐藤 :はい。

鹿島 :そしてその後は9月19日にインディジャパンがツインリンクもてぎで行われます。佐藤選手といいますとF1時代も、日本に帰ってくるとスタンドを巻き込んで、佐藤選手がどこを走っているのかが観客の声、あるいはフラッグのはためきで分かるというレースを展開していましたけど、どうでしょう今年は。

佐藤 :本当にファンのみんなの前で走れるっていうのは、すごく僕も楽しみにしています。自分自身がこの2シーズン近くレースが出来なかったってことがあるので、本当にコックピットに戻れたっていうだけでもすごく嬉しいんですけど、やっぱりインディジャパンとして母国レースに戻ってこれるっていうのは本当に幸せなことなので、9月にいくまでに自分の力をしっかり出せるようなレースを見せていって、インディジャパンではみんなの前で力の限り走りたいですね。

鹿島 :ちょっと気が早いかも知れないですけど、2011年、来年のシーズンはどんな風に考えてらっしゃるんでしょうか。

佐藤 :僕自身はレースに復帰することで、とにかく自分の可能性を広げたいって思っていたので、今年インディカーシリーズに参戦することが決まった時は本当に嬉しかったですね。ここまでもちろんF1復帰に2年間をかけてきたわけですけど、今は本当に100%インディに集中しているので、とにかくシーズンエンドに向けて、インディジャパンですね、それを一番の大きな目標として今シーズンインディカーシリーズを戦っていきたいですし、それがしっかりと繋がるような形で、やるからには当然頂点を目指して、インディで思いっきり走れるようになりたいですね。

鹿島 :たまたまですけど、スポッター、いわゆるコースの上から指示をだすロジャー安川選手が、僕は友人でもあるんですけど、インディライツのデビュー戦の時にスポッターを務めてもらっているんですよね。それで先日ちょっとレースの後に電話してみたんですけど、「佐藤琢磨選手は、近い将来、あっという間にトップ争いに絡む!」って言ってましたね。かなり熱く語ってました。

佐藤 :本当ですか! いや本当にロジャー選手は、僕は一緒にレースをしたことはなかったんですけど、でもイギリス時代に知り合って、お互いに違うカテゴリでレースをしていて、非常に彼の人柄の良さっていうか、本当ににじみ出てきますよね。その中で彼が現役のインディカードライバーとして、非常に経験が豊かなこと、その彼が僕のスポッターを務めてくれるって聞いたときはすごく嬉しかったし、まだ1戦を一緒にやっただけですけど、今後ロジャー選手と一緒にできるだけ前を目指して頑張っていきたいですね。

鹿島 :スポーツチャンネルのGAORAの担当者の方も、「もうどんどん視聴率も上がるし、会員数も今年は増えそうだ」って喜んでましたけど(笑) とにかく9月19日のインディジャパンでトップ争いを生で観たいという方も多いと思いますから引き続きいいレースをして下さい。今日は本当にありがとうございました!

佐藤 :ありがとうございました!






今週は、元F1ドライバー、今シーズンはアメリカモータースポーツの最高峰、
インディカーシリーズで活躍する佐藤琢磨選手に、先日都内で行われたインディジャパンの記者発表の後、特別にお時間を頂いての単独インタビューをお届けしました。

ドライバーズサロン!
来週も素敵なゲストをお迎えしてお送りします。
お楽しみに!




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