Driver's Salon
 クルマを愛して止まない「彼ら」との対話。それがレーサー鹿島のドライバーズサロン。

プリウスで5大陸を走破
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鹿島 :横田さんがずっとトライされてきた、エコミッションというプロジェクト。これが、5大陸をプリウスを使って走破するという壮大な企画で、本当に5大陸目が終わった直後に、今日スタジオにお越し頂いています。

横田 :9月4日に終わってホッとしているところですね。

鹿島 :元々の目的、意義は。

横田 :プリウスというクルマが1997年10月に記者発表されるわけですよ。それでね、あの記者発表に立った時にね、本当に体中が硬直するっていうか、体の中にロゼが流れるっていうかな。普通だとワインの赤が流れているじゃないですか、それがシュワーっと冷えたロゼが流れている感覚がありましたよね。今までのレシプロエンジンっていうのは100年間も同じですよね、ピストンをこうやって。

鹿島 :ガソリンと空気を混ぜて、爆発という。

横田 :そう。どんなにカッコよくても。ただ、そのシステムがね、THS・トヨタハイブリッドシステムっていうんですか、それがコンピュータによって電気をためて、電気と両方を併用する。これは新しい種の誕生ですよね。だからビックリしたんですよ。それで僕はこの時初めて“なぜ”と思ったのは、こんなハイテクなクルマが果たしてクルマと呼ぶなら世界中を走れるのかと。それで20世紀最後の地球を見させてもらいたいということを提案して、色んなところでご協力頂いて、アメリカへ旅立つんですね。その時のタイトルが『エコミッション@USA』だったんですけど、その目的は、サブタイトルが“アメリカ環境最前線を探る”っていうんで出掛けるわけなんですよ。そこでお会いした人たちに受けた言葉っていうのが、今の僕の10年間になりますね。それで最も強烈だったのが若田光一さんですね。若田光一さんがね、まあミッションが忙しい中で今日は会えないっていう話だったんですけど、プリウスで行ったら「ちょっと会いたい」っていうんで来てくれたんですよね。その時に我々の前でお話ししてくれたのは、宇宙開発っていうのは、宇宙を見に行ってると僕は思っていたわけですよ。火星とかマーズ計画とか。そうじゃないと言うんです。「それもそうだけど、人類が初めて宇宙から地球を見たんだ」と。

鹿島 :ははあ!

横田 :それで「地球を見てみたら、水がない、ガソリンがないというのが分かったんだ」と。僕らもね、10年もレントゲンを撮っていなければ分からないじゃないですか。だからそういう目線なのかっていうのが分かって、そこから目線が変わりましたね。

鹿島 :いわゆる10年前ですと、リアリティが無かったような気がするんですよ、言葉はありましたけど。

横田 :そうなんですよ。言葉だけが先行していてね、分からなかったんですよ。その時に初めて、ああそうかって思いましたね。

鹿島 :でもそういう意味で言いますと、このエコミッションの10年の間に世の中はものすごく変わっていますよね。その辺はよりリアルに体感されているはずですよね、横田さんは。

横田 :そうですね。僕が予想したよりもはるかに早く来たのと、それからこの2年くらいの進化っていいますかね、今回は政府も変わったしね。やっぱりもっと早くやるべきだと思ったね。やっぱり日本を外から見て、日本列島っていうのを見たときにね、日本が生きる道っていうのは環境立国しかないですよね。戦争もしないで生きていくためには。環境立国の日本をやっつけちゃったら地球が沈んでしまうんじゃないかってなるほどに、なることだと思うんですよ。

鹿島 :これは日本が持っている色んな技術ですとかモノの考え方を、環境を守る方向にフルに生かして。

横田 :ええ。そういう商品が世界中に行き渡るといいますか、例えばペットボトルのリサイクルもそうですし、太陽光線もそうだし風車もそうだし、クルマもそうですね、本当にエコタイヤといってもただ空気抵抗の良いエコタイヤじゃなくて、グッドイヤーさんに初めてお願いしたのはですね、バイオフィラーっていうトウモロコシを原料にした粘着材っていうのかな、ちょっとわかりにくいんだけど、0.3%使っているって書いてあったんですよ。それってすごいアプローチでしょ。ただ空気抵抗がいいっていうんじゃなくて、本当にアプローチしていたわけですね。ですから他のタイヤじゃダメなんだと初めてお願いしたのが2005年でしたね。それから走らせて頂いているんですけど。やっぱりそういう意味ではすごいんですよ。タイヤにもそういうことやっているわけですよね。クルマはね、僕はもう40年走ってますけどね、エンジン壊れても死なないですよ。でもタイヤが壊れたら死にますよ。だからタイヤは一番大事なんですよ。レースもそうじゃないですか、今のF1だってそうだし。タイヤ勝負でしょ。

鹿島 :タイヤしか地面についていないですからね。

横田 :そうですよ。わずかピース1箱分ですよ。あれで僕らは命を支えている。あれが4つ分しかないわけですよね。ですから僕も、今回はタイヤをどう選ぶか、転がり抵抗が良くてなおかつ強くて、誰でも手に入るっていうことでね、RV-Sっていうタイヤをね。

鹿島 :グッドイヤーの。

横田 :そうなんです。それを選ばせて頂いて。今までね、モンゴルのレースで1回だけ、これは僕のドジだと思うんだけど、カーブで横を擦ってパンクさせた。それ以外にないですよ。

鹿島 :そうなんですか!?

横田 :6万キロ走っていますけど、すごいですよね。

鹿島 :5大陸をプリウスで走破されているわけですけど、悪路、いわゆる舗装されていない道を走りながら、自らタイヤ交換をしながら色んな大陸を走られてきたんじゃないかなっていうイメージだったんですけど。

横田 :タイヤ交換なんかしたことないですね。

鹿島 :フフフ。

横田 :もっとすごいのは、4562m、アンデス山中の高いところを上がった時にも平気だったですね。結局ですね、高いところっていうのはレシプロエンジンなんかですと、1000mごとに約10%はダウンするんですよ、パワーが。ということはですね、30%くらいはダウンしているはずなんですよ、4000mを超えると。空気が無くて、我々は目が黄色くなりますからね。3分の1ですから。

鹿島 :薄いと黄色くなるんですか?

横田 :ちょっと黄疸ぽくなりますよね。そのくらいなのにクルマはスイスイ行くんですよ。タイヤだって空気圧が変わってくるわけでしょ、全然平気なんですよね。だからどっちかっていうと、機械の方が今や人間より優れたコンピュータを駆使して出来ているっていう感じがしますよね。

鹿島 :となると、情熱ですとか気合いですとか、本当に体力が無いと色んなところに行けないですね。

横田 :そうなんですよ。どっちかというとクルマについていけないんですよね。

鹿島 :それくらいの性能になってきているってことですよね。






生きるために、自らを燃やす
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鹿島 :横田さんは今、68歳。

横田 :もうじき69です。

鹿島 :人間は年齢じゃないっていうところはありますけど、本当にお若いですよね、色んな意味で。エネルギッシュですし。

横田 :それは人生が長く、ものさしが長いから(笑)。

鹿島 :プラス、やっぱりあれですか、これだけアグレッシブに色んな活動をされているってことで、モチベーションを高く。

横田 :うーん、活動はある種あれですよね、1回このエコミッションに出てから、出た時に初めて若田さんの話で奮起されて、目線が変わって。会う人会う人によってどんどんそういう風になっていって。そういう人に押され押されたパワーですね。初めに5大陸やろうと思ったわけじゃないんですよ。アメリカから帰ってきてみたら、それじゃヨーロッパはどうかなと。それでヨーロッパに行ったのもですね、EUが12カ国になってオープンした年ですからね、2000年っていうのは。何でかっていうとですね、それはアメリカのある有名な環境学者に、環境問題で一番大切なことってなんですかって聞いたことがあるんですよ。そうしたらね「あなたと私の関係です」って言ったんですよ。人が仲良くすれば環境はいいんだって言ったわけですよ。ということは国境って一番まずいですよね。だからヨーロッパって国境を外した国なんですよ、12カ国が。えらいな〜と思ったわけです、あんだけドイツとフランスなんか争ったわけでしょ。国境を全部取っちゃったわけです。どういうつもりでいるんだろうと思って行ったわけですよ。そうしたら、ドイツの市長がこう言いましたよ。「これからは環境に住みましょう。国境に住むんじゃなくて環境に住みましょう」って。だからそういう言葉がズシンズシンと来るんですよ。

鹿島 :素晴らしい言葉ですね。

横田 :何かね、そういう人たちってちゃんと持っているんですよ。それを聞きながら旅をしているうちに、こりゃ世界中を回らないと全部をふさげないなみたいな。

鹿島 :で、気がついてみれば10年5大陸(笑)。

横田 :そう。それで去年南米が無事に終わった段階で、4大陸終わっちゃったと。じゃあ死ぬ前に5大陸やっておこうかなと。それが今回のオーストラリアですね。

鹿島 :いやあ…素敵なお話の数々、本当にありがとうございます。あの、これから横田さんは、5大陸走破が終わりましたが、今度は何をされるんですか?

横田 :どこに行くんですかね〜。今はたぶん・・・、オーストラリアのユーカリっていうのは自分で発火して燃えるんですね。知ってます?

鹿島 :そうなんですか? 恥ずかしながら全く知りませんでした。

横田 :今回行って初めて聞いたんですが、ユーカリの森が火事になる、こないだの森林火災、あの火災の一番の原因は落雷だそうです。それで2番が風が吹いて電線が切れてショートして燃える、3番がタバコの吸い殻とかキャンプ、4番目が自然発火だそうです。それでも燃えないとね、ユーカリの木って自分で燃えるんだって。

鹿島 :それは調整しているわけですか。

横田 :そうです。ユーカリの木っていうのは、燃えて熱でもって発芽するんですよ。そうじゃないと皮が堅くて発芽できない。だから増えちゃうと燃えて、強いヤツだけ残るように出来ているんですよ。もっとすごいのは、地面が全部焼き畑になるわけですよね。雑草も燃えちゃうんですよ。そこに新しく種を落っことして発芽させて新しい森を作ると。だから今は、東京都ほどの森が少しグリーンになったところですよね。だから今は僕はそれを見て、ちょうどそれかなと思ってますね(笑) 次の発芽はなんだろうと。

鹿島 :ちょっと鳥肌が立ちましたね。

横田 :すごいですよね、自然の力って。

鹿島 :もうね、シンプルな言葉で言いますと、人間もっと頑張らなきゃダメなんじゃないかって感じますね、本当に(笑)。

横田 :そう。植物や動物に負けますよ、本当に。自分で火をつけるってんだから。驚きますよね。

鹿島 :驚きました。

横田 :今回のオーストラリアで一番驚いたのはそれです。

鹿島 :色々とありがとうございました。ぜひまたお越し頂きたいと思います。

横田 :ありがとうございます。





今週は、自動車環境評論家、
横田紀一郎さんをお迎えしました。

ドライバーズサロン!
来週も素敵なゲストをお迎えしてお送りします。
お楽しみに!




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