Driver's Salon
 クルマを愛して止まない「彼ら」との対話。それがレーサー鹿島のドライバーズサロン。

F1は、洗練されたファッションである。

(5月22日放送)
熊井昌広 「POPEYE」編集長
熊井昌広
(kumai masahiro)

1960年7月生まれ。大学卒業後、出版社(現アシェット婦人画報)へ。「メンズクラブ」誌に携わる。92年にマガジンハウスに転籍。「ガリバー」「ポパイ」「アンアン」などを経て、03年より現職。スーパーカーブームまっただ中に中学生時代を過ごし、社会人3年めに購入したミニ1000でエンスー生活を開始。ロータス・ヨーロッパ〜ジネッタG4〜ミニ1300クーパーなど英国ライトウエイト車にハマる。家族グルマは7年前に10万円(!)で手に入れた89年型シトロエンBX。2005-2006日本カーオブザイヤー実行委員。

このコーナでは、レース関係者はもちろん、車を愛してやまない人気アーティストをゲストにお招きして、カーライフやレースのエピソードなど、その人物の本音にレーサー鹿島が迫ります。

今週のゲストは、1976年の創刊以来、若者のライフスタイル誌として一斉を風靡。そして今年1月、ファッション誌としてリニューアルしたあの『POPEYE』編集長の熊井昌広さんをお迎えします。お楽しみ下さい。



クルマ遊びがとまらない。
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鹿島 :先週に引き続きまして、『POPEYE』編集長の熊井昌広さんです。さて、御社(マガジンハウス)の方に聞いたんですが、去年くらいまでレースをやられていたとか。

熊井 :レースといっても年間3戦くらいしか出ていなかったんですけど、ジネッタカップというワンメイクの草レースに出たりね。あるいは筑波サーキットで行われるショップが主催する走行会とか、ジムカーナに毛のはえたようなタイムトライアルとかっていうのにたまに出ていたってカタチですね。

鹿島 :“たま”じゃないですよね、今のを聞いていると(笑)。

熊井 ::いえいえ、“たま”です。たまにね。

鹿島 :ジネッタ、ジネッタG4ですか?これはいわゆるサーキットを走るためだけに生まれてきたような構造を持つ、公道を走るレーシングカー。これを持ってらっしゃる?

熊井 :いや、あのね、去年の12月くらいまでは持っていたんですよ。7年間。でもあまりにも…屋根も無くて、エアコンはもちろんヒーターすらもついていないんですよ。僕のクルマはジネッタG4の67年型ってやつを97年に全部ビス1本からレストアしてあったんです。ですので本当に遊園地に乗るゴーカートにそのままナンバーがついているようなクルマだったので(笑)夏は暑いし冬は寒い、雨が降ったらお手上げだし。ワイパーもついてませんから。

鹿島 :フフフ。

熊井 :フロントはフロントガラスじゃないんですよ。アクリル盤のレーシングスクリーン。風なんかモロに額に当たるし。

鹿島 :でもサーキットを走るとき、当然サーキットまではこのクルマで道具を載っけて。

熊井 :そうです。あまりお金が無いもんですから。余裕のある方はローダーに乗せて来られるんですけど、僕はもうそのまま走ってきて、向こうでは空気圧を見るくらいでそのまま帰ってくると。一度はクラッシュして、ガムテープでボンネットを全部固定して帰ってきました(笑)。

鹿島 :もう手放されたということで、今年はサーキットは走っていないんですか?

熊井 :走っていないですね。手放したんですけど、クルマっておもちゃじゃないですか。だからまた欲しくなっちゃって、すぐまたミニのバリバリチューニングカーを買って、今またそれをいじくって遊んでいます。

鹿島 :これは今のミニですか?

熊井 :昔のミニです。


ライオンの森で立ち往生!
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鹿島 :思い出とともに心に残っているクルマといいますと。

熊井 :今も乗っているんですけど、もう乗って7年くらい経つんですが、家族のクルマとして乗っているのはシトロエンBXを今も愛用しています。これは89年型のウェーバーのキャブレターがついている、えらい昔のクルマなんですよ。どっちかというとウチのカミさんが子供の送り迎えとか色々に使っているんですけど、3年くらい前かな、富士サファリパークに行こうっていう話になって、行ったらちょうどその日は運悪く台風が近づいていて、着いたら土砂降りの雨になっちゃったんですね。土砂降りの雨の富士サファリパークって当然ほとんどお客さんがいなくて、僕らとあと数台くらい。でもこれが怪我の功名っていうか、雨のサファリパークってすごく雰囲気がいいんですよ。

鹿島 :そうなんですか?

熊井 :標高が高いので雨雲が低く垂れ込めて、霧が濃くかかっている状態なんですね。

鹿島 :より自然を感じることが出来るんですね。

熊井 :そうなんです。それでゲートが開くとジュラシックパークに入っていくような雰囲気すらあって結構楽しんでたんですね。でもその1週間くらい前から、どうもドライブシャフトからガリガリ音がするっていうのは気がついていたんですね。

鹿島 :そんな時に行っちゃマズイんじゃないですか?

熊井 :そんなクルマに長いこと乗ってるんで、これは大丈夫な音だろうと思っていて。そしたらちょうどライオンゾーンを見ているときにですね、ライオンゾーンも雰囲気が良かったんですよ。フッと霧が切れるとライオンがすーっと目の前に現れたりとかね、すごく面白かったんですよ、他のクルマほとんどいないし。そうしたら急に、ライオンゾーンのちょうど中間地点でクルマにガコガコガコッ! っと変なショックが来てですね。そのとたん、いくらアクセル吹かしても前に進まなくなっちゃったんですよ。後で見たらドライブシャフトのベアリングがダメになって抜けちゃっていたんですけど。

鹿島 :うわっ。

熊井 :雨も降ってて、ライオンゾーンで立ち往生して。

鹿島 :携帯はつながったんですか。

熊井 :携帯で電話したら、係員の方が「今どこですかー」、「ライオンゾーンのど真ん中でーす」、「あと20分くらい待っていてください。」なんて言って助けに来てくれたんですけどね。サファリパークの中で、冗談のように親子4人で壊れたシトロエンで立ち往生しているっていうのは今も結構いい思い出になっていて、子供なんかも逆にライオンを見たことよりそっちのほうが思い出になっていてね。結構オススメですよ、雨のサファリパーク。

鹿島 :壊れて止まるってのはアレですけどね(笑)雨のサファリパーク。本当の自然を、そして恐怖を感じてしまったわけですね。

熊井 :そうですね(笑)、でもそれだけですかね、今のシトロエンBXで帰ってこられなかったっていうのは。

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今思えば、あれはセナでした。